14. Juli 2020 II
夕方に思い立って、美容院に連絡をして、店長さんに髪を切ってもらう。
とても変わった美容院。
鸚鵡が店内を飛び回り、犬が駆け回り、店長さんの息子さんが膝にやってくる。
店長さんは、ラテン系の雰囲気なのだけれども、ナイキの短パンに同じくナイキのノースリーブのTシャツ、そしてビーチサンダルという出で立ちで、ホームページで紹介されているパリッとした姿からはかけ離れている。
でも、上手。
いつも、したい髪型というのは特になくて、どの美容院でも「適当に、自然な感じで」とお願いする。
たとえそれで変な髪型になっても構わない気持ち。
旅先でも美容院に行くこともあるし、なりたい自分、見せたい自分みたいのはない。
通うことがあるとすれば、特殊な能力のある美容師さんに出会った時。
この店長さんはそんな感じの人だった。
後ろが伸びているので短く、頭が重く感じるので全体的に自然な感じで軽くしてもらえれば、あとは任せます、と頼んだら、じっと鏡ごしに顔を見て、あなたにはこんな感じ、と私に似合う髪型のイメージを説明してくれたのだけれども、よくわからず。
それでも、そんな感じで、とお願いする。
ビーチサンダルでなければそのままランニングに出かけられそうな不思議な出で立ちだけれども、何かプロフェッショナルな自信が感じられたから。
シャンプーをしてもらって、カットしてもらったら、早い、早い。
出来上がったイメージに合わせて手を動かしているからか、何も迷うことなく切っていく。
無駄な話も一切ない。
髪を乾かすと、さらに軽くするためにカットしてくれたのだけれども、その時点から初めて見る自分だな、どちらかというとビダルサスーン系カットかな、と思いながらもすべて任せる。
前髪も無理に作らず、耳に髪がかかるようにしてくれて、そうそう、これはありがたいんだよね、と思いながら。
とてもはっきりとしたイメージに仕上がり、私の悪いところが出てしまっているのではないかとどぎまぎとした気持ちになる。
二重鏡で頭の後ろの具合を見せてもらっていると、「あなた仕様の美人さんカットです」というようなことを鏡ごしに格好良く決まった顔で言われて、この感じの髪型は実は初めてです、と伝えると、いつも自然な感じにしていたのかもしれないけれど、顔立ちがはっきりしているから、あなたにはぼんやりとした感じよりははっきりしている方が似合うと思うよ、と言われる。
髪の毛にも邪魔されたくない感じでしょ、色々すごくはっきりしているイメージがあるよ、と笑われる。
その言葉がちょっと刺さる。
どうでもいいというのは、煩わされたくないということで、確かに髪の毛のことをあまり気にしたくないのだった。
髪型で印象が変わるということはよくわかっているのだけれども、顔に髪がかからなければ、基本的にはなんでも良いと考えているところがある。
その、なんでも良いと決めているところですら、はっきりしているのだった。
ぼやかすのは、そういう自分を隠しておいたほうが良いだろうな、と思うところがあるから。
自分の偏りをそのままに見せるということにとても強い抵抗があって、何につけ、全く別の方向の要素を取り入れることで、自分の特徴を打ち消したいと考える自分がいる。
自分を隠さないといけないという思いは、どこから、いつから?
スタイリング剤とかもきっと嫌いでしょ、でもオイルだけは使った方がいいよ、はい、これ、当店からのプレゼントです、と可愛いサシェに入れられたアルガンオイルやシャンプーの詰め合わせをもらう。
またきてね、とか、次回の予約とか、とにかく何の勧誘もなく、最後までさっぱり。
そのこともありがたかった。
不思議な夕方の1日。