Leben
修士課程の時に使っていたノートを引っ張り出してきて、寝室で考え事をする。
忘れないわ。
中国学で『紅楼夢』について発表する必要があって、クリスマス・お正月休みを返上して全巻読んだのだった。
その時に張り切ってたくさん買ったノートの残り。
この教授にはかなりいじめられていたのだけれども(Prinzessin・お姫様というあだ名をつけられていた)、最後の最後、博士論文の口頭試問で日本学と中国学で審査を受けるにあたり、中国学側では彼に審査をお願いしたら、退官する前日に論文を読み上げて、成績を出してくれたのだった。
そして、なぜか私を下の名前で呼んで、「私の一番の学生だったよ」と言ってくれて、握手をした。
孔子の理想を実際に生きていた人で、ヴァイオリンを弾き、週末はサッカーをして、中国語で詩を書いていた。
ちなみに彼もオーストリアの人だったような気がする。
とても変わった先生だったけれど、一本芯の通っていた人で、退官する前日に1日で論文を読んで、成績を出してくれたことは生涯忘れない。
いろいろなことが今はよくわかる。
起きることは全て必要なことばかり。
あの頃の自分と今の自分を比べると誇張ではなく100倍は強くなったような気がする。
あの頃の方が今よりうんと軽くて、単純で、能力を磨くことにばかり気が取られていたけれども、今の方が世界や人間のことを知っているという感じがする。
とりわけイギリスに住んでいた頃に出会った友人たちの存在が大きい。
私にはチベット、カザフスタン、中国、台湾、韓国、インド、リビア、スコットランド、イングランド、アイルランド、スペイン、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、オーストリア、デンマーク、スウェーデン、日本に友人がいる。
そのことの意味。
この10年は、ずっと人生の旅をしてきた感じがする。
実際、本当によく旅に出ていた。
そうできる環境に置かれていたのよね。
人間はあまり賢い生き物ではないな、と思うし、好きな生き物でもないけれども、自分についても少しは理解が進んだのかも。
でも、次のフェーズへ進む時が来たように思う。
ここからはより自由に生き方も働き方も決めていけるという確信を得ているので、どんどん挑戦して行きたい。
まずはこの半年。
アイディアはある。
あとは、それをどう実現するか、プロデューサーの立場でプロットを組み立てていく。
楽しみましょう。