story
いろいろ思うことがある。
少し前に、ある方が亡くなった。
いわゆる大富豪で、日本が大好きで、オーストリアに日本の温泉旅館を作ろうとしていた人。
だからこそ悪い人も彼の周りにはいた。
最後に彼を利用して、変な裁判を起こして、大きなお金を持って行った人も知っている。
このお金を持って行った人のことは、最初に会った時から、どうしようもない人だと思っていた。
嘘つきは泥棒の始まりというけれど、軽薄で、ずるくて、どうしようもなかった。
そのどうしようもない人のために、彼の温泉を作る計画や、他の計画も流れてしまった。
どうしても先行きが真っ暗にしか見えなかったから、
私は、このプロジェクトには参加しなかったのだけれど、
なぜ、猜疑心の強い彼が、こんな詐欺師を信じてしまうのだろうと最初は思った。
でも、詐欺師は、猜疑心を解く方法を知ってるのだった。
彼のどういうところが弱いか、よく見えていた。
彼は、このどうしようもない人を信じて、裏切りに遭い、最後の夢を実現できなかった。
この一連のことが5年ぐらい続いていたのだ。
裁判が終わり、敗北した彼は、もう終わりだと言った。
お金が底をついたのではない。
気力が尽きた。
そして、最後は旅行を楽しむだけになった。
結婚はせず、親戚もいなかったから、遺産は全て会社に渡った。
お城を買って、自宅としては別に、周囲には見渡す限り自庭しか見えないような大きな家も購入し、日本に渡航する時はいつもファーストクラスで、足が悪くなってからは自分の電動車椅子を乗せるためだけにファーストクラスをもう一席をおさえるような旅をしていた。
実業家としてなんでも実現してきたのに、なぜ、最後の生涯の夢がこうなったのかな。
救いは、最後のお手伝いさんが心の優しい人で、彼が亡くなった時に泣いてくれたことだと思う。
運命は決まっていないというけれど、自業自得という言葉も使いたくない。
人生は時間でしかないのかな、とも思う。
そう考えるとシビアだ、いろいろ。
人生は物語だから、点を回収して、円を描くように終われるといい。
そういう生き方をしないとだめだ。